※このページはデザイン確認用のサンプル記事です。登場する人物・企業・エピソードはすべて架空です。
アウトドア用品のECを12年運営してきた藤井玲奈さんは、広告のクリック単価が3年で2倍に跳ね上がったことをきっかけに、広告予算の半分を「記事」に切り替えた。半年間、アクセスがほぼゼロの時期を社内の反対にも耐えて乗り越え、今は検索から来る客が広告と同じ売上を作っている。キャンプベース合同会社で店長を務める藤井さんに、判断の背景と今の課題を聞いた。
創業経緯|山用品店の販売員から、EC店長へ
実店舗の限界を感じていた販売員時代
――ECを始められた経緯を教えてください。
藤井:もともとは登山用品を扱う実店舗で、7年ほど販売員をしていました。お客さんと話すのは好きだったんですが、店舗は在庫のスペースに限りがあって、売りたいものを全部並べられないのがずっと不満で。展示できるのはワンシーズンで数十点が限界で、その裏に置いてある在庫は、お客さんの目に触れる機会がほとんどありませんでした。ネットなら在庫を分散できると思って、2014年に会社の仲間3人でECを立ち上げました。
――販売員時代に、印象に残っている出来事はありますか。
藤井:お客さんに合わせてテントを提案しても、店にある色やサイズが希望と合わなくて、そのまま帰られてしまうことが何度もありました。せっかく良い提案ができたのに、在庫がないだけで売上にならない。あの悔しさが、ECを始める一番の原動力でした。
――立ち上げ当時は、どんな体制だったんですか。
藤井:3人とも実店舗の販売員で、ECの知識はゼロでした。カート機能付きのサービスを使って、写真も自分たちのスマホで撮って、手探りで始めました。最初は本業の合間にやる副業のような感覚でしたね。梱包資材の発注から発送まで、全部自分たちでやっていて、深夜に3人で作業していたのを覚えています。
――3人で始めたことのメリットはありましたか。
藤井:大きかったです。一人だったら、最初の半年の無反応に心が折れていたと思います。3人で「今週はゼロだったね」と笑い合えたのは、精神的にかなり支えになりました。今も、何かの判断に迷ったときは3人で話す習慣が残っています。
――最初から今の形だったんですか。
藤井:いえ、最初は自社サイトだけでした。全然売れなくて、半年で楽天に出店して、そこから少しずつ注文が入るようになりました。Amazonは3年目くらいからです。今はスタッフ6人で、私は店長という立場で3つのチャネル全部を見ています。
――自社サイトだけで売れなかったのは、なぜだと思いますか。
藤井:単純に、誰も見に来てくれなかったからです。今なら記事やSNSで人を呼ぶ発想がありますが、当時はサイトを作れば注文が来ると思っていました。モールに出店して、初めて「探している人がいる場所に行く」ことの大切さを知りました。
テント一本足からの広がり
――取扱商品はどう広げてきたんですか。
藤井:最初はテントとタープだけでした。前職の知り合いのメーカーから直接仕入れられたのがそれだけだったので。そこから焚き火台、寝袋と広げていって、今は300アイテムほど扱っています。ただ、今でも売上の中心はテント関連で、全体の4割くらいを占めています。
――なぜテントが強いんでしょうか。
藤井:単価が高くて、買う前にしっかり調べる商品だからだと思います。安い小物と違って、失敗したくないという気持ちが強いので、情報を求めて検索する人が多い。これは後で記事戦略にもつながる、うちにとって重要な特徴でした。
――商品を増やす際に、基準はありましたか。
藤井:スタッフの誰かが実際に使って「良い」と言えるものだけを扱う、という基準です。カタログだけ見て仕入れたことも一度だけありますが、実際に使うと期待外れで、お客様対応に苦労しました。それ以来、実物を試すまでは扱わないと決めています。
会社として仕事になったタイミング
――いつから本業として続けられるようになったんですか。
藤井:3年目に楽天の売上が実店舗の給料を上回った頃です。そこで仲間の一人が実店舗を辞めて専任になり、翌年には私も辞めました。今の会社の形になったのはその後で、法人化したのは5年目です。
――退職を決めるとき、迷いはありましたか。
藤井:ありました。実店舗の仕事も好きでしたし、安定した給料を手放す不安もありました。ただ、ECの数字が伸び続けていたので、今しかないと思って踏み切りました。
資金と最初の壁
――立ち上げ時の資金はどうされたんですか。
藤井:3人で出し合って、合計200万円ほどでした。仕入れと最初のホームページ制作費でほとんど使い切って、正直、数か月分の運転資金しか残っていませんでした。最初の半年、注文がまったく入らなかったときは、この200万円がゼロになる前に何とかしないと、という緊張感がありました。
――その時期、どう持ちこたえたんですか。
藤井:3人とも実店舗の給料があったので、生活は何とかなっていました。ECの売上がゼロでも死なない、という状況だったのは、今思えば助かった部分です。もしECだけで生活していたら、半年も待てなかったと思います。
事業内容・強み|クリック単価が2倍になった日から
広告に頼った成長の限界
――広告を減らした理由から教えてください。
藤井:キャンプ需要が伸びていた時期は、広告費を増やせば売上も増えるという、単純な関係が成立していました。ただそれは同時に、同じキーワードを狙う競合も増えるということで、クリック単価がじわじわ上がっていったんです。3年で見ると、主力キーワードのクリック単価はほぼ2倍になりました。売上は横ばいなのに広告費だけ増えていく状態が続いて、このままいくと数字上、利益がゼロになる時期が見えていました。月次の損益表を見るのが怖くなっていた時期です。
――クリック単価が上がっていることに、いつ気づいたんですか。
藤井:毎月の広告レポートは見ていたので、数字自体はずっと目にしていました。ただ「そのうち下がるだろう」と思って先延ばしにしていたんです。3年分のグラフを並べて初めて、これは一時的な変化ではないと気づきました。危機感を持つのが遅かったのは反省点です。
――そこで記事に切り替えたわけですね。
藤井:広告予算をゼロにする勇気はなかったので、まず半分を記事のための時間と外部ライターの費用に回しました。「テントの選び方」「初心者が失敗する持ち物リスト」のような、検索されそうな悩みをテーマに、月8本ペースで公開していきました。
――記事のテーマは、誰が最終的に決めていたんですか。
藤井:最初は私が全部決めていましたが、今はスタッフ全員でテーマ会議をしています。現場に近い人ほど、お客さんの悩みに詳しいので、私一人で決めていた頃より、テーマの幅が広がりました。
――具体的に、広告費と売上の比率はどう変わったんですか。
藤井:ピーク時は売上の20%近くを広告費に使っていました。今は10%程度まで下がっています。同じ売上を、より少ない広告費で作れるようになったのは、記事からの流入が増えたからです。
――競合他社も同じような判断をしているんでしょうか。
藤井:同業の何社かと情報交換していますが、まだ広告中心のところが多い印象です。記事に切り替える判断は、短期的には数字が落ちるように見えるので、踏み切れない会社が多いんだと思います。
半年間、アクセスはほぼゼロだった
――すぐに効果は出ましたか。
藤井:いえ、最初の3か月はアクセスが本当にゼロに近くて、社内でも「広告費を減らした分、売上が落ちているのでは」と心配する声が出ました。正直、私も何度もやめたくなりました。半年を過ぎたあたりから検索結果に記事が出るようになって、そこから緩やかに増えていって、1年経った頃には記事経由の売上が広告経由とほぼ同じ額になっていました。今では記事経由の売上が広告経由を上回る月も出てきています。
――現在の記事の本数はどれくらいですか。
藤井:公開済みで200本を超えました。全部が読まれているわけではなくて、実際にアクセスを集めているのは、そのうちの2割くらいです。残りの8割も、いつか検索されるかもしれないと思って、消さずに残しています。
――その半年間、他に試したことはありますか。
藤井:SNSでの発信も並行してやっていましたが、こちらもすぐには結果が出ませんでした。記事とSNS、両方が同時に育つまで、想像以上に時間がかかりました。
――検索順位が上がってきた実感は、いつ頃ありましたか。
藤井:「初心者の失敗例」の記事が検索の1ページ目に出るようになったのが、確か8か月目です。その日、社内でちょっとしたお祝いをしました。数字としては小さな変化でしたが、精神的にはかなり大きな出来事でした。
記事が「効く」お客さんと「効かない」お客さん
――記事の効果は、どの層に強いんでしょうか。
藤井:初めてキャンプ道具を買う方に強いです。何を買えばいいか分からない状態で検索して来る人は、記事で不安を解消してから買ってくれるので、返品や問い合わせも少ないんです。逆に、すでに欲しいものが決まっている方は、価格比較サイトから来て一番安いところで買う。ここは広告や価格勝負が今も必要な部分で、記事に全部置き換えられるわけではないと思っています。
――返品や問い合わせが減ったというのは、数字で見えているんですか。
藤井:記事経由の注文は、購入前の問い合わせ件数が広告経由より少ない傾向があります。記事の中で疑問がある程度解消されているからだと思います。カスタマー対応の負担が減ったのも、記事戦略の副産物でした。
藤井:今のバランスは、広告が「今すぐ欲しい人」を、記事が「これから欲しくなる人」を捕まえる、という役割分担になっています。両方をやめずに、比率だけ変えたのが今回の判断でした。
――価格比較で来る方への対応はどうしていますか。
藤井:そこは広告と価格施策で対応しています。記事で無理に引き止めようとはしていません。層によって届け方を変える、という考え方に落ち着きました。
――層を分けるという発想は、どこから来たんですか。
藤井:広告の数字を分析していたときに気づきました。同じキーワードでも、来る人の目的がまるで違う。それを一つの記事や一つの広告文で全部拾おうとしていたのが、そもそもの間違いだったんだと思います。
リピートにつながった記事の書き方
――印象的だったお客さんの反応はありますか。
藤井:「初心者の失敗例」という記事を読んで初めてテントを買った方が、翌年には焚き火台を買いに戻ってきてくれたことがあります。購入時に「去年の記事、参考にしました」というメッセージをもらって、記事が単発の集客ではなく、その後も読まれ続けていることに気づきました。検索経由のお客さんは、広告経由よりも次の買い物で戻ってくる率が高いというのは、データを見てもはっきり出ています。
――そのお客さんとは、その後も接点があるんですか。
藤井:メールマガジンに登録してくださっていて、今も季節ごとの記事を読んでくれているようです。直接のやり取りは少ないですが、何年か置きに買い物をしてくれる方が増えているのは、記事を続けてきた成果だと感じています。
――データではどのくらいの差があるんですか。
藤井:正確な数字は出していませんが、記事経由のお客さんのリピート率は、広告経由よりも明らかに高い印象です。感覚としては倍近い差がある月もあります。メールマガジンの登録率も、記事経由の方が広告経由の3倍近くあります。
――記事へのコメントなどは活用していますか。
藤井:コメント欄は設けていませんが、お問い合わせフォームから記事への感想が届くことがあります。その感想も、次の記事のネタになっています。
――今後、コメント欄を作る予定はありますか。
藤井:検討していますが、荒れたときの対応まで手が回らないので、まだ踏み切れていません。今のところは、フォーム経由の一方通行で十分回っています。
広告は止めた瞬間にゼロになる。記事は書いた分だけ、後から効いてきます。
苦労した時期と乗り越え方|社内の反対と、書く体力の限界
社内から「広告に戻すべき」という声が出た
――記事に切り替えている間、社内の反応はどうでしたか。
藤井:3か月経った時点で、数字を見ていた別のスタッフから「これ広告に戻した方が早いんじゃないですか」と言われました。実際、目の前の数字だけ見れば、その通りだったんです。私も反論する根拠が弱くて、正直かなり迷いました。会議で険悪な空気になったこともあります。
――それでも続けた理由は。
藤井:同業の知り合いから「検索は積み上がるけど広告費は積み上がらない、消えるだけだ」と言われたのが引っかかって、もう3か月だけ続けさせてほしいと社内に頼みました。結果的にその3か月で検索結果に記事が出始めたので、ぎりぎりのタイミングでした。あと少し早く諦めていたら、今の形にはなっていなかったと思います。
――その「あと3か月」を、社内にどう説明したんですか。
藤井:「3か月経って何も変わらなければ、広告に戻す」と期限と条件をはっきり伝えました。あいまいに続けさせてほしいと言うより、条件を決めた方が納得してもらいやすかったです。結果的にその条件を守る必要がなかったのは、運が良かった部分もあります。
記事を書き続ける体力がなかった
――もう一つの壁は何でしたか。
藤井:書く体力です。最初は私が全部書いていましたが、通常の受発注や在庫管理と並行してやるのは無理がありました。外部のライターに頼んでも、うちの商品を実際に使ったことがない人が書くと、情報が薄くて検索にも評価されにくい。ここは何度も書き直しが発生して、コストが想定より膨らみました。
――当時、他のスタッフに手伝ってもらう発想はなかったんですか。
藤井:お願いしたことはありましたが、「文章は苦手」と断られることが多かったです。書くこと自体への抵抗感が根強くて、そこを崩せたのは、AIが下書きを作ってくれるようになって、話すだけで済むようになってからでした。
藤井:今は、スタッフが実際に使った感想を話して、それをAIに下書きとしてまとめてもらう形にしています。ゼロから書くよりずっと早くて、しかも実体験が入っているので内容も薄くならない。ここに落ち着くまでに1年近くかかりました。
――今の記事づくりの流れを教えてください。
藤井:キャンプに行ったスタッフが、使った商品の感想を音声で残します。それをAIに整理してもらって、私が最終確認をして公開する。1本あたりの作業時間は、以前の3分の1くらいになりました。
――AIが作った文章に、修正することは多いですか。
藤井:事実の確認と、うちらしい言い回しへの調整は必ずします。スタッフが話した内容以上のことをAIが書いてしまっていることもあるので、そこは注意して見ています。あくまで下書きで、公開する文章の責任は私が持つという意識は変えていません。
数字が出ない期間、社内をどう保ったか
――社内の空気を保つために工夫したことはありますか。
藤井:毎週の会議で、アクセス数がゼロに近くても、必ずそのまま報告するようにしていました。良く見せようと数字を隠すと、後で信頼を失うと思ったので。代わりに「検索順位が何位まで上がったか」という、売上以外の指標を一緒に共有して、ゼロではない進捗があることを伝えるようにしていました。
取引先との関係が変わった
――記事戦略は、メーカーなど取引先との関係にも影響しましたか。
藤井:ありました。記事で商品を詳しく紹介するようになってから、メーカーの担当者から「うちの製品をもっと使ってほしい」と声をかけられることが増えました。以前は発注する側と受ける側という関係でしたが、今は情報を一緒に作る関係に近くなっています。
――具体的にはどんな協力がありますか。
藤井:新商品を記事用に先行して借りられるようになったり、開発の背景を直接聞けるようになったりしました。これは広告だけをやっていた頃にはなかった関係です。
――取引先が増えることにもつながりましたか。
藤井:直接それが理由というわけではありませんが、記事を見て「うちの商品も取り扱ってほしい」と声をかけてくださるメーカーが、以前より増えた印象があります。記事が名刺代わりになっている部分もあると思います。
経営の課題・集客・採用|ネタ切れしない仕組み
今、経営で一番の課題は
――今、経営で一番の課題は何ですか。
藤井:記事とチャネルの運用を、私一人に依存させないことです。今の仕組みは私が旗を振っている前提でできているので、私が抜けたら止まってしまう。マニュアル化はしているつもりですが、実際にスタッフだけで回せるかは、まだ試したことがなくて不安があります。
――マニュアル化はどこまで進んでいますか。
藤井:記事のネタ探しから公開までの手順は文書にしています。ただ、「この感想は記事になる」「これはまだ弱い」という判断の部分は、まだ私の感覚に頼っていて、言葉にできていません。ここを誰かに引き継げる形にするのが、次の目標です。
――利益率の面ではどうですか。
藤井:広告費が減った分、利益率は改善しました。ただ、記事にかける外部ライターの費用や、スタッフの作業時間も本来はコストなので、そこまで含めて計算すると、思っていたほど大きな改善ではないというのが正直な実感です。
コスト構造の見直し
――広告費以外のコストで、見直したことはありますか。
藤井:外部ライターへの依存度です。最初は記事を増やすために外部に多く頼んでいましたが、実体験のない記事は成果が出にくいと分かってから、社内制作の比率を上げました。結果的にコストも下がって、質も上がりました。
――今後もこの体制を続けますか。
藤井:基本は社内制作を軸にしつつ、専門的な内容だけ外部に頼む、という今のバランスがちょうどいいと感じています。
――外部ライターとの付き合い方で、学んだことはありますか。
藤井:依頼するときに、うちの商品を実際に送って試してもらうようにしています。それだけで記事の質がかなり変わりました。お金だけ払って任せるのではなく、体験してもらう手間を惜しまないことが大事だと分かりました。
――費用面での影響はありますか。
藤井:商品を送る分のコストはかかりますが、書き直しの回数が減った分、総額では以前より抑えられています。急がば回れ、という感覚です。
集客の中心は「問い合わせ」からのネタ探し
――記事のネタはどう決めていますか。
藤井:お客様相談窓口に届く質問です。同じ質問が3回来たら記事にする、というルールにしています。ネタに困ったことは一度もありません。逆に言うと、問い合わせが来ない商品や分野は、記事のアイデアも出てこないので、そこは今後工夫が必要だと思っています。
――楽天・自社サイト・Amazon、それぞれの集客の違いはありますか。
藤井:楽天とAmazonはそれぞれのモール内の広告や検索対策が中心で、記事の効果はほとんど届きません。記事が効くのは自社サイトだけです。なので今は、自社サイトの比率を少しずつ上げていく方向で動いています。モールは今すぐの売上、自社サイトは将来の顧客を作る場所、という位置づけです。
――3チャネルの売上比率は、どう変わってきましたか。
藤井:数年前は楽天が半分以上を占めていましたが、今は自社サイトが4割近くまで伸びています。この比率を逆転させたいというのが、今の目標です。
採用は「書ける人」より「使った人」
――採用についてはどう考えていますか。
藤井:これから採る人には、文章力よりもアウトドアを実際にやっている人を優先したいと思っています。書く部分はAIである程度補えますが、実体験は補えません。求人でも「キャンプ、登山の経験がある方」と明記するようにしてから、応募者の質が変わった実感があります。前職で私自身が、実体験のない説明の薄さに苦労した経験があるので、そこは譲れないポイントです。
――面接ではどんなことを聞くんですか。
藤井:直近で行ったキャンプの話を、できるだけ具体的に聞きます。道具の細かい不満や工夫が話せる人は、記事にしたときの説得力も違うので、そこを重視して見ています。
――採用の難しさはどこにありますか。
藤井:アウトドア経験があって、かつEC業務もできる人は、なかなか見つかりません。今のところは、経験を優先して採用してから、ECの実務は社内で教える形にしています。時間はかかりますが、今のところこの順番でしか採れていません。
今後の展望|記事を「資産」として増やしていく
記事の「賞味期限」と向き合う
――これから取り組みたいことはありますか。
藤井:今ある記事を定期的に見直して、情報が古くなっていないか確認する仕組みを作りたいです。書いて終わりにすると、数年後には内容が古くなって逆に信頼を落とすので。あとは、記事から来たお客さんがその後どんな買い物をしているかを、もっと細かく追いたいと思っています。
――見直しの体制は、もう決まっているんですか。
藤井:まだ手作業でやっていますが、公開から1年経った記事を自動でリストアップする仕組みを作りたいと思っています。今は思いついたときに見返すだけなので、漏れがあるのが気になっています。
スタッフの成長を記事に生かす
――スタッフの育成についてはどう考えていますか。
藤井:記事を書くために、スタッフ自身がキャンプに行って商品を試す機会が増えました。これは意図していなかった効果ですが、スタッフの商品知識が上がって、接客やお客様対応の質も上がっています。記事戦略が、社員教育の役割も兼ねている感覚です。
モール比率をさらに見直したい
――3チャネルの比重は、今後どう変えていきたいですか。
藤井:自社サイトの比率をもっと上げたいですが、楽天とAmazonをやめるつもりはありません。それぞれのお客さんの層が違うので、入口を複数持っておくこと自体には価値があると思っています。あくまで「自社サイトを育てる」という方向性です。
読者へのひとこと
――読者へひとことお願いします。
藤井:広告をやめる勇気より、成果が出るまでの数か月を耐える仕組みを先に作ることの方が大事だと思います。うちの場合は「問い合わせをネタにする」という仕組みと、数字をそのまま社内に共有する姿勢が、その数か月を支えてくれました。焦らずに続けられる仕組みさえあれば、結果は後からついてくると、今なら言えます。
取材を終えて
広告から記事への切り替えは、多くの会社が「効果が出ない」段階で諦める。藤井さんが続けられた理由は、同業者の一言と、社内に頼んだ「あと3か月」という具体的な期限だった。社内から反対の声が出ても、数字を隠さずに共有し、期限を決めて説明責任を果たしながら押し通したところに、判断の強さを感じた。記事戦略がメーカーとの関係やスタッフ教育にまで広がっていた点も、当初は想定していなかった副産物だという。記事を書く体力の壁も、AIと実体験を組み合わせる形で乗り越えている。効率化の対象と、手放さない部分の線引きが、終始はっきりしていた取材だった。数字が出ない期間をどう社内に説明したかという話は、コンテンツ施策に限らず、時間のかかる投資すべてに通じる話だと感じた。
(取材・文:編集部/取材日:2026年8月8日)