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取材記事

【サンプル】受託開発を「月額制」に変えた5人のIT会社——見積もり地獄から抜けるまで

2026.07.15 約20分 取材日: 2026-07-08 場所: 東京都渋谷区・ノードワークス オフィス
【サンプル】受託開発を「月額制」に変えた5人のIT会社——見積もり地獄から抜けるまで
相原 拓

取材先

相原 拓

代表取締役CEO/株式会社ノードワークス

IT(受託開発)

https://example.com/

「要件定義→見積もり→値切り→炎上」のサイクルに疲れ果てた相原さんは、受託開発を月額制に切り替えた。売上の見通しが立ち、社員の残業が消えた。

※このページはデザイン確認用のサンプル記事です。登場する人物・企業・エピソードはすべて架空です。

渋谷の外れ、雑居ビルの3階。デスクの数より椅子の数が少ない小さな事務所で、株式会社ノードワークスの相原拓さんは受託開発の料金を「一括の見積もり」から「月額の固定費」に変えた。要件をすべて決め切ってから作るという、業界の当たり前をやめた結果、社員の残業は減り、逆に受注を断る仕事も増えたという。社員5人の会社が、なぜそのやり方で成り立っているのかを聞いた。

創業経緯|見積もりを書くたびに嘘をついている気がした

SIerでの下請け時代

――まず、創業前のお仕事から聞かせてください。

相原:新卒で入ったのは中堅のSIerです。官公庁や大手メーカーの基幹システムの、さらに下請けの下請けのような立ち位置でした。要件はすでに固まった状態で降ってきて、自分たちは決められた仕様をコードにするだけ。設計の意図を聞きたくても、間に何社か入っていて誰に聞けばいいか分からない。そういう仕事を6年くらいやっていました。

――そこでの経験が、今の仕事のやり方につながっている部分はありますか。

相原:あります。見積もりを書くたびに、嘘をついている気がしていました。要件が固まっていないのに、固まっている前提で金額を出さないといけない。案の定、着手してから「やっぱりここも直したい」と要望が増えて、当初の見積もりと現実がズレていく。そのズレを埋めるのは、いつも現場のエンジニアの残業でした。自分が管理側に回ってからは、その残業を指示する側になって、それが一番きつかったです。

――特に記憶に残っている案件はありますか。

相原:ある基幹システムの改修で、要件定義書には「画面のレイアウトを変更する」としか書いてなかったのに、実際に手を動かすと裏側のデータの持ち方まで直さないと動かないことが分かった案件があります。見積もりの前提が崩れているのに、契約金額は変えられない。結局、下請けの現場が無償でその分を吸収しました。あのときの徒労感は今でも覚えています。

独立のきっかけ

――独立を決めた直接のきっかけは。

相原:ある案件で、要件定義に3か月かけたのに、納品直前になって「そもそもこの機能は要らなかった」と言われたことがありました。誰か一人が悪いわけではないんです。発注側も本当に必要なものが分からないまま進めていたし、うちの側も「もう決まったことにして先に進めよう」という空気を止められなかった。その時、要件定義という工程そのものが機能不全を起こしていると感じました。それなら要件を「先に全部決める」のをやめて、「決めながら作る」形にできないかと考えたんです。

――それで2019年に創業されたんですね。

相原:そうです。最初は今のような月額制ではなく、普通の受託開発として始めました。理想はあっても、それをどう料金の形にするかが分からなかった。最初の1年は結局また見積もりを出して、また同じことの繰り返しでした。

――独立を家族にはどう伝えましたか。

相原:妻には正直に「最初の1年は収入が保証できない」と話しました。子どもはまだいなかったので、条件としては恵まれていたと思います。それでも妻が「やりたいならやったら」と言ってくれたのは大きかったです。今でも、あの時に反対されていたら独立していなかったと思います。

最初の半年は無収入

――創業直後の資金面はどうでしたか。

相原:貯金を崩しての開業でした。最初の半年は自分の給料をゼロにして、案件を取りに行っていました。前職のつながりで小さな仕事をもらえたのは助かりましたが、単価は下請け時代とほとんど変わらなかった。このままだと辞めた意味がないと、正直かなり焦っていました。

――その時期、心が折れそうになったことは。

相原:何度もありました。特に、前職の同期が管理職に昇進したという連絡を見たときは、自分の判断が正しかったのか分からなくなりました。それでも続けられたのは、前職で一緒だった後輩が「相原さんの考え方、面白いから何かあったら手伝います」と言ってくれていたことです。実際にその後輩が最初の社員になりました。

――独立して1年目、最初に取れた大きな仕事は覚えていますか。

相原:ある物流会社の入出庫管理システムです。前職の元上司から紹介してもらいました。金額は前職時代の下請け価格に近く、正直あまり儲かりませんでしたが、初めて「発注者と直接話しながら作れる」経験ができた仕事でした。要件が変わるたびに、なぜ変わったのかをその場で聞ける。それだけで気持ちの負担が全然違うんだと分かったのが、今の会社の形につながっています。

事業内容・強み|「作る前に決める」を有料化した

月額制「開発チーム提供」の仕組み

――今の事業内容を教えてください。

相原:中小企業向けに、業務システムの開発チームを月額制でお貸しする形です。在庫管理や受発注、勤怠のような、既製のパッケージソフトでは微妙に合わない業務を、その会社専用に作って、作った後も毎月手を入れ続けます。契約は「何を作るか」を先に全部決める買い切りではなく、「毎月このチームが動きます」という契約です。

月の稼働時間の上限を決めて、その中で優先順位の高いものから一緒に決めて作っていきます。今月は在庫の画面、来月は請求書の出力、というように。要件定義という重い工程を、最初にまとめて終わらせるのではなく、毎月小さく繰り返す感覚です。

――優先順位はどうやって決めているのですか。

相原:毎月最初に、お客様の担当者と30分だけ話す時間を必ず取ります。「今、現場で一番困っていることは何ですか」を聞いて、そこから逆算する。うちが決めるのではなく、毎月お客様に決めてもらう形にしています。決める人が現場から離れると、優先順位がずれていくので、そこは意識的に守っています。

――決めた優先順位が、途中で覆ることもありますか。

相原:よくあります。月の途中で「やっぱり別の画面が先に必要になった」と言われることも普通にある。買い切りの契約だとこれは「追加費用」の話になりますが、月額なら「今月の中で入れ替えましょう」で済みます。優先順位が変わることを前提にした契約なので、そこで揉めることがほとんどないのは、精神的にかなり楽です。

――発注側にとっての一番のメリットは何だと思いますか。

相原:総額が最初に分からない不安はありますが、月の費用が固定なので予算が立てやすいという声が多いです。それと、要件定義という重い会議に時間を取られない。うちが毎月「これで進めていいですか」と小さく確認していくので、発注側の負担がかなり減ります。

――逆に、発注側が戸惑う点はありますか。

相原:「結局いつ完成するのか」という感覚が薄くなることです。買い切りの契約だと納品日がゴールになりますが、うちは毎月少しずつ良くしていく前提なので、ゴールが最初から見えません。完成を目指す仕事だと思っている発注担当者には、最初にその違いをはっきり説明しないと、後で「終わりが見えない」と不安にさせてしまいます。

――月額の料金は、どのように決めているのですか。

相原:エンジニアの稼働時間から逆算しています。1社あたり、うちの社員の稼働の何割を占めるかを先に決めて、そこから月額を出す。案件の規模で値段が変わる見積もりとは逆の発想で、先に「使える時間」を決めてしまう感覚です。今は1社あたり月に数十万円台から、複数人が動く会社では百万円を超えるところまで、規模に応じて幅があります。

――最初に月額の金額を決めるとき、失敗はありませんでしたか。

相原:低く見積もりすぎたことはあります。「毎月これくらいで十分だろう」と気を遣って安めに出したら、実際の稼働がその倍以上になってしまった契約が最初の頃に一つありました。そこから、稼働の見込みは多めに出して、余った分は次の月に前倒しで使ってもらう、という形に変えました。安く見せようとしないほうが、結果的にお客様にとっても誠実だと今は思っています。

――値上げの相談をすることもありますか。

相原:あります。稼働の実態が契約時の想定より増えている会社には、正直にそのままお伝えします。角が立ちそうで最初は苦手でしたが、稼働の記録を毎月お客様と共有しているので、根拠を見せながら話せば、意外と揉めることは少ないです。数字を隠さないことが、値上げの話をしやすくしていると思います。

――逆に、値下げを相談されることもありますか。

相原:あります。作りたいものが一通り出来上がって、稼働時間が余ってきたお客様には、こちらから「稼働を減らして料金を下げませんか」と提案することもあります。稼働が余っているのに黙って同じ金額をもらい続けるのは、うちのやり方の趣旨に反すると思っているので。長い目で見れば、信頼されて紹介につながるほうが得だと考えています。

契約前に必ず見せる資料

――契約を結ぶ前に、必ずすることはありますか。

相原:「最初の3か月で何をするか」を紙一枚にまとめて見せます。抽象的な期待のまま契約すると、後で「思っていたのと違う」となりやすい。3か月分だけ具体的に書いて、それ以降は「一緒に決めていきます」とはっきり伝えます。ここで期待値を合わせられないお客様とは、契約しないようにしています。

  • 最初の3か月で作る画面や機能を具体的に列挙する
  • 月の稼働時間の上限と、それを超えた場合の扱いを明記する
  • 「途中でやめる場合」の条件も先に決めておく

――「途中でやめる場合」まで先に決めるのは珍しいですね。

相原:月額制は、いつでもやめられる契約でもあります。だからこそ、続けてもらうための努力を毎月しないといけない。逆に言うと、その緊張感がうちにとってはいい歯止めになっています。買い切りの契約だと、納品した後は関係が薄くなりがちですが、月額だと毎月「今のままでいいか」を聞かれる立場になります。

忘れられない仕事

――印象に残っている仕事はありますか。

相原:ある食品卸の会社さんです。最初は「受発注システムを作ってほしい」という依頼でした。でも実際に業務を見せてもらったら、電話とFAXと紙の台帳が複雑に絡み合っていて、システム化する前に業務のやり方自体を整理したほうがいいと分かった。買い切りの契約だったら、頼まれた通りにシステムを作って終わりだったと思います。月額だったので、「今月は業務の整理だけさせてください、システムはまだ作りません」と提案できました。

結果的に、その会社は今も契約が続いていて、システム化したのは業務の3割くらいです。残りの7割は「システム化しないほうがいい」とお伝えしました。売上としては小さくなりましたが、あの提案ができたことが、うちのやり方の一番いい実例だと思っています。

頼まれた通りに作るのが仕事だと思っていた時期は、実はいい仕事ができていなかったと思います。

――他にも印象的な事例はありますか。

相原:小さな部品メーカーさんで、社長が一人でExcelの見積書を作っていたところがあります。関数が複雑に絡み合っていて、社長本人しか直せない状態でした。話を聞くと「自分が入院したら会社の見積もりが止まる」と本気で心配していた。そこで最初の1か月は、見積もりの仕組みを社長の頭から出してもらって、誰でも触れる形に置き換えることだけをやりました。社長はそれだけで「肩の荷が下りた」と言ってくれました。

――システムを作ること以外の相談も受けるのですか。

相原:よくあります。「そもそも紙の請求書をやめられないか」とか、「この業務、外注したほうが安いのでは」といった相談です。うちの答えがシステム開発でなくても、まず相談してもらえる関係を作れているのは、月額で毎月顔を合わせているからだと思います。案件単位の付き合いでは、こういう相談はまず来ません。

他社との違い

――同業他社との違いは、どこにあると考えていますか。

相原:似たような月額制のサービスを名乗る会社は増えてきました。ただ、実態は「作業時間を切り売りしているだけ」のところも多い気がします。うちが大事にしているのは、毎月の会議で「これ、本当に作る必要ありますか」と聞き返すことです。時間を切り売りする発想だと、頼まれたものを作ったほうが売上になるので、この質問はしにくくなる。うちは固定額なので、作らない提案をしても損をしません。それが構造的な違いだと思っています。

――逆に、あえて契約をお断りすることもありますか。

相原:あります。「とにかく早く、安く作ってほしい」という要望が最初から強い会社さんとは、うちのやり方が合わないので、他の会社を紹介することが多いです。安さで比べられると、うちは勝てません。一緒に考える時間を取ってもらえる相手かどうかを、最初の打ち合わせで見るようにしています。

苦労した時期と乗り越え方|初めての月額契約が炎上した

最初の失敗

――月額制に変えてから、うまくいかなかったこともあったのでは。

相原:ありました。2社目の月額契約が、始めて半年で炎上しました。稼働時間の上限を決めていたのに、お客様側から「これくらいはやってもらえると思っていた」という要望が次々来て、断り切れずに時間を超えて対応してしまった。うちの社員が疲弊して、お客様も「思っていたサービスと違う」と不満を持つ、両方が不幸になる形でした。

――何が原因だったのでしょうか。

相原:契約前の期待値合わせが甘かったんです。「月額でお願いできることは全部お願いできる」という誤解を、こちらが正していなかった。稼働時間の上限は契約書に書いてありましたが、口頭で説明するときにあいまいにしてしまっていた。安心して契約してもらいたい気持ちが先に出て、厳しい条件をきちんと伝えきれていませんでした。

社員が1人辞めた

――その時期、社内はどんな雰囲気でしたか。

相原:正直、良くなかったです。当時4人いた社員のうち1人が辞めました。理由はその炎上案件だけではないと思いますが、「稼働の見通しが立たない働き方に疲れた」とは言われました。自分は経営のことで頭がいっぱいで、現場がどれだけ無理をしているかに気づくのが遅れていた。辞めると言われたときは、かなりショックでした。

――辞めると言われた瞬間、どんな気持ちでしたか。

相原:頭が真っ白になりました。会社を大きくしたくて始めたわけではなく、自分がやられて嫌だった仕事のやり方をやめたくて始めたのに、同じことを社員にやらせていたんじゃないかと思いました。その夜は一人で事務所に残って、契約している全社の稼働時間の記録を、初めから見直しました。

――他の社員たちの反応はどうでしたか。

相原:「相原さんが謝るところを見て、逆に安心した」と言われました。それまで自分は、社長は弱みを見せてはいけないと思い込んでいたんです。でも、うまくいっていないことをそのまま認めて、一緒に仕組みを直していく姿勢のほうが、社員はついてきてくれるんだと知りました。

――そこからどう立て直したのですか。

相原:まず、稼働時間を超えそうな案件は、超える前に必ず自分に相談してもらうルールにしました。現場の判断で「断れない」まま抱え込む状況を作らないようにする。それから、契約前の期待値合わせの資料をもっと具体的にしました。「できること」だけでなく「できないこと」も同じ分量で書くようにしたんです。

そこから変えたこと

――他に変えたことはありますか。

相原:月に一度、お客様と「稼働時間の使い方」を振り返る会議を必ず入れるようにしました。使いすぎている場合はその場で相談し、翌月の依頼を調整する。炎上する前に小さく調整する仕組みを作ったことで、あの規模の失敗はその後起きていません。辞めた社員には申し訳なかったですが、あの出来事がなければ今の仕組みはできていなかったと思います。

安心してもらいたくて、厳しいことを言えなかった。それが一番の失敗でした。

――炎上した2社目のお客様とは、その後どうなりましたか。

相原:一度きちんと謝罪をして、稼働時間の使い方を一緒に見直しました。今も契約は続いています。あの会社の担当者には今でも頭が上がりません。うちが仕組みを直すきっかけをくれた相手でもあるので、今では一番付き合いの長いお客様の一つです。

――辞めた社員とは、今も連絡を取りますか。

相原:年に一度くらい、近況を報告し合っています。彼が「今の会社は前より稼働の見通しが立つ」と言っていたのを聞いて、少し安心しました。自分の会社を良くする形で、彼の指摘が生きていると思えたので。

――今、当時と同じような失敗を防ぐために、他にしていることはありますか。

相原:新しい契約を結ぶたびに、過去の炎上案件の話を新しいお客様にもそのまま伝えるようにしています。「以前、期待値のズレで一度うまくいかなかったことがあります」と最初に言ってしまう。かっこよくはないですが、失敗を隠さないほうが、後から大きな不満につながりにくいと分かったので、今は開き直って話しています。

経営の課題・集客・採用|紹介だけでは伸びない

今の経営課題

――今、経営で一番の課題は何ですか。

相原:新規のお客様をどう見つけるか、です。今契約している8社は、ほとんどが紹介で来てくれました。紹介はありがたいのですが、いつまでもそれだけに頼っていると、紹介してくれる人の人脈が尽きた時点で成長が止まります。自分たちから「こういう会社です」と発信する力が、正直まだ弱いと感じています。

――経営者として、数字はどのように見ていますか。

相原:月額契約なので、来月の売上は基本的に見えています。その安心感に慣れすぎて、半年先、1年先の新規獲得の数字にはあまり目を向けてこなかった。今の課題は、その「見えている安心」に頼らず、先の種まきをどう仕組みにするかだと思っています。

集客の実態

――集客の具体的な取り組みはありますか。

相原:ホームページに、契約前に見せている「最初の3か月で何をするか」の考え方を、実例を隠した形で記事にして載せています。読んだ人が「うちも同じ悩みがある」と気づいてくれることを期待しているのですが、今のところ問い合わせにはあまりつながっていません。書く時間の確保も難しくて、更新が止まりがちです。

――発信のどこに難しさを感じていますか。

相原:技術的な内容は書きやすいのですが、それだと経営者には届きません。逆に経営者向けに書こうとすると、抽象的な精神論になってしまう。技術と経営の間の、ちょうどいい具体性を書くのが難しいです。

――セミナーや紹介会のような場には出ていますか。

相原:去年から、中小企業の経営者が集まる小さな勉強会に何度か顔を出すようにしています。そこで名刺交換してすぐ契約になることはほとんどありませんが、半年後くらいに「あの時話した相原さんですよね」と連絡が来ることがある。即効性はないですが、紹介に頼らない種まきとして続けています。

――SNSでの発信はどうですか。

相原:試してはいますが、うちが向けたい相手である中小企業の経営者は、SNSでシステム開発の話を積極的に見ているわけではないと感じています。むしろ、税理士さんや商工会の担当者のような、経営者の近くにいる人たちに知ってもらうほうが効果があるのではと、最近は考え方を変えつつあります。

採用で困っていること

――採用はどうされていますか。

相原:5人という規模なので、1人採るかどうかで会社の雰囲気が大きく変わります。技術力だけでなく、「お客様に作らない提案ができる人」を採りたいのですが、面接でそれを見抜くのは難しい。過去に、技術力は高いけれど頼まれたものをそのまま作ろうとする人を採用して、結局うちのやり方に合わずに離れてもらったこともあります。

今は、面接の中で「無駄だと思う仕事を断った経験はありますか」と必ず聞くようにしています。エピソードの中身より、断る理由をどう考えていたかを見るようにしています。

――採用で、後悔した判断はありますか。

相原:技術力の高さに気を取られて、お客様との会話が得意かどうかを軽く見て採用しなかった人がいます。後で、その人が別の会社でお客様対応も含めて活躍しているという話を聞いて、判断が浅かったと反省しました。今は技術の面接と、お客様役を想定した会話の面接を、必ず分けて行うようにしています。

――待遇面で工夫していることはありますか。

相原:5人の会社で大手と給与額で競うのは難しいので、稼働時間の見通しが立つことを一番の強みとして伝えています。月額制なので、突然の炎上でその月だけ徹夜が続くようなことが起きにくい。実際に採用面接で、前職の残業の多さを理由に転職を考えている人と話すことが多く、そこには響いている実感があります。

AIとの付き合い方

――業務の中でAIはどのように使っていますか。

相原:コードを書く作業自体は、AIを使うようになってかなり速くなりました。その分、空いた時間をお客様の業務を見に行く時間に充てています。あとは、毎月の振り返り会議の議事録をAIに整理してもらって、次の優先順位を決める材料にしています。ただ、「作らない提案をするかどうか」の判断は、AIに聞いても答えは出ません。そこは自分たちが現場を見て決めるしかない部分だと思っています。

――社員のAIへの向き合い方に、世代差はありますか。

相原:若手のほうが抵抗なく使っています。逆に、自分より少し年上のメンバーは「自分で書いたほうが早い」とあまり使いたがらない。そこは無理に統一していません。使うかどうかより、最終的にお客様の業務を理解しているかどうかを大事にしたいので。

今後の展望|受託を辞めたいわけじゃない

これからやりたいこと

――今後の展望を教えてください。

相原:会社の規模を大きく増やすつもりはあまりなくて、今の8社との関係をもっと深くしたいと思っています。ただ、同じやり方で困っている小さな会社が他にもたくさんあるはずなので、うちのやり方自体を発信して、同業の人が同じ苦労をしなくて済むようにできたらとも思っています。受託開発という仕事自体を辞めたいわけではなく、そのやり方をもう少し健全にしたいという気持ちです。

――業界全体に対して思うことはありますか。

相原:見積もり地獄で疲れている会社は、うちの周りにもまだ多いです。全部が月額制になるべきとは思いませんが、「作る前に決める」ことに、もう少しお金と時間をかけていい業界だと思っています。うちのような小さな会社の事例でも、参考になる部分があれば発信していきたいです。

読者へのひとこと

――最後に、同じように受託の見積もりに悩んでいる方に、一言いただけますか。

相原:見積もりが当たらないのは、能力の問題じゃなくて、仕組みの問題だと思います。うちも料金の形を変えるだけで、同じメンバーの仕事がだいぶ楽になりました。値段の付け方を一度疑ってみる価値はあると思います。

もう一つ言うと、いきなり全部を月額制に切り替える必要はないと思います。うちも最初の1年は普通の見積もり方式のままでした。1社だけ試しに月額でやってみて、それが上手くいってから広げていった。小さく試せる部分から変えていくのが、遠回りに見えて一番安全だったと思います。

取材を終えて

「作らない提案ができるか」という一つの問いが、この会社のあり方を決めていた。月額制という料金の形は手段であって、目的はいつも「本当に必要なものを見極めること」だった。社員が辞めた失敗を隠さずに話してくれたことも印象に残る。仕組みを変える痛みを経たうえでの、今の落ち着いた語り口なのだと思う。値段の付け方一つで、働き方も、お客様との関係も変わる。取材の最後、相原さんが「まだ正解だとは思っていない」と付け加えたのが印象的だった。

(取材・文:編集部/取材日:2026年7月8日)

相原 拓

取材先

相原 拓

代表取締役CEO/株式会社ノードワークス

IT(受託開発)

1990年生まれ。SIer勤務を経て2019年に創業。中小企業向けの業務システム開発を、月額制の「開発チーム提供」モデルで手がける。社員5名。

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